身体表現性障害とは、身体の病気と思われるような身体症状があるが、身体の診察や検査ではそれに見合った所見がなく、一方で、症状そのものや症状に伴う苦痛、不安によって、生活に支障が生じている状態です。
身体症状は多岐にわたりますが、下痢・便秘・腹痛などの消化器症状、めまいや動悸・痛みなどが多いようです。
また生活上のストレスや心理的な葛藤が、身体症状と関連していると思われる場合もありますが、特定の心理的要因がはっきりしない場合も少なくありません。
基本的に治療は身体症状や生活の状況を一緒に見直すことで、その症状を軽くする方法を探っていきます。気分の落ち込みや不安が強い場合は、抗うつ薬や抗不安薬が役立つ場合もあります。こうして身体症状が日常生活や仕事に与える影響を最小限にし、たとえ症状があっても、普段に近い生活を送れるようになることが、治療の大きな目標です。
身体表現性障害と混同しやすい状態に、「心身症」があります。心身症は胃潰瘍や喘息など、身体の病気がはっきり診断されており、ストレスがその発症に関与していると考えられる場合です。実際に身体疾患があるという点で、身体表現性障害とは異なります。また、若い方では統合失調症、中高年の方ではうつ病でも、身体表現性障害と似たような症状が出ることがあり、治療法が異なるため、注意して見分ける必要があります。