萎縮性胃炎とは、胃粘膜に炎症が長期間生じることで粘膜の破壊と修復が繰り返され、しだいに胃の粘膜が薄くなる状態です。
萎縮性胃炎と慢性胃炎は、ほぼ同じ意味として扱われます。
原因で最も多いのは、ヘリコバクター・ピロリ菌という胃に感染する細菌で、ほぼ幼少期に感染します。
特にピロリ菌による萎縮性胃炎では、胃潰瘍・十二指腸潰瘍・胃がんなどの病気を起こす可能性が高くなるとされています。
ピロリ菌は、胃の中でウレアーゼという酵素を生成します。
このウレアーゼは、胃の粘液に含まれている尿素を分解してアンモニアをつくり出します。
このアンモニアはアルカリ性であるために、ピロリ菌は胃酸を中和して胃内で生き続けます。
またアンモニアは、胃の粘膜を傷つけ炎症を起こします。
こうして長期間にわたりピロリ菌が炎症を起こし続けることで、しだいに粘膜が萎縮を起こし、萎縮性胃炎の状態となります。
萎縮性胃炎には特徴的な症状はありません。
ただチクチクとした胃の痛み・腹部の膨満感・胃が重く感じられるなどの症状を自覚する方もいます。
しかし萎縮性胃炎の主要な原因であるピロリ菌の治療をすると、食欲不振や胃もたれ感などが改善することがあります。
萎縮性胃炎の検査で第一に選択されるのは胃カメラです。
そのほか萎縮性胃炎の原因であるピロリ菌の感染を調べたり、胃の萎縮について間接的に知る検査などがあります。
ピロリ菌によって引き起こされた萎縮性胃炎は、その除菌治療により胃の粘膜の炎症を改善させることができます。
さらに粘膜の炎症を改善させることで、胃潰瘍・十二指腸潰瘍・胃がんを起こす危険性を低下させることができます。
除菌治療では、胃酸を抑える薬や抗菌薬などを1週間内服し、しばらく期間をおいてから除菌が成功したかどうか検査します。
ただし除菌治療が成功した後であっても、粘膜の炎症・萎縮が改善するには長い期間を要します。
そのため、除菌治療が成功した後でも胃がんになることはありえます。
除菌治療が上手くいった後であっても、定期的に胃カメラなどによる胃がんのチェックを行うことは大切です。