多発性硬化症とは、原因不明な免疫系の異常により、自分で自分の神経細胞を障害・死滅させてしまう自己免疫疾患です。
何度も脳・視神経・脊髄と中枢神経系のいろいろな部分で病変・治癒を繰り返し、線維化し硬くなるのが名前の由来です。
欧米では人口10万人当たり50人とかなり多い病気でありますが,日本では8~9人程度と言われております。
そして膠原病と同じように、平均発症年齢が30歳前後の若年女性に多いと言われております。
この病気の特徴は,どの神経が障害されるかによって症状が異なります。
脳神経が障害されると、視力障害や視野の異常・複視・顔面筋の麻痺・嚥下障害や言語障害などをきたします。
また大脳が障害されると、反対側の運動神経や感覚神経の麻痺・てんかんなどが起こります。
小脳が障害されると、平衡感覚の障害・巧緻運動の障害(細かな運動の障害)・嚥下や言語の障害などを認めます。
さらに脊髄で障害が起こると、同側の運動神経の麻痺や感覚障害・膀胱直腸障害などがみられます。
発症の原因が不明なため、神経症状の早期回復・再発予防・障害の進行抑制を目的に、薬物療法が治療の中心になります。
初めて症状が現れたとき、あるいは再発期にはステロイドパルス療法がおこなわれます。
この薬は、再発の予防効果はないものの、症状や後遺症を軽減させる作用があります。
ステロイドパルス療法で症状の改善がみられない場合には、血漿交換が行われることもあります。
そして緩解期には発作を予防するためインターフェロン療法を行うことが一般的です。